更新料について

1. 大家から見た、貸家の更新料

貸家では、多くの場合、2年で更新となっています。

大家から見ると、更新を期に、火災保険(水漏れ対策等の借家人賠償責任保険を含む)や資力の確認等を行うことができます。なお、更新料を月々の家賃と別にすることで、月々の家賃が安く見える効果があると考える大家もいます。

更新料についてのトラブルは、一義的に明確な更新料についての契約条項がない場合に起こります。

例えば、「更新料は、新賃料の1ヶ月分」と契約書に記載している例があります。しかしながら、借家人には、大家から一方的に告げられた更新後の賃料値上げに応じる義務はなく、値上げされた新賃料を当然に支払う必要はありません。

そうすると、「更新料は新賃料の1ヶ月分」との契約書の記載は、新賃料がどのように決まるか分からないから、金額が不明確なので、新賃料1ヶ月分を更新料として合意しているとはいえず、更新料として新賃料1ヶ月分を支払う必要はないことになります。

しかし、更新料自体の定めがあるのであれば、借家人の立場としては、旧賃料1ヶ月分の支払いをしておいたほうが無難という考えもあります。

なぜなら、確かに、裁判例では、賃料の支払いをして更新料のみ支払わないという例が少なく、更新料のみを支払わない場合に、債務不履行として建物賃貸借契約解除、明渡請求までできるかどうかは、明確でありません。ただし、先例的価値には疑問があるものの、法定更新の場合でも、更新料を支払わないことを理由に建物賃貸借契約解除、明渡しを認めたかのように読める裁判例もあるからです。

ところが、更新料を請求することは、大家にとって、メリットばかりとは言えません。

まず、更新料の請求は、借家人にとって、転居の契機になってしまうことがあります。

また、更新料の大半は、更新契約の締結事務を行う不動産管理会社が受け取ってしまうことが多く、更新料の設定が、大家にとって、金銭的にメリットになるか疑問があります。更新契約締結を不動産管理会社に依頼しないで、火災保険の継続だけを確認することも考えられます。

さらに、金銭的なメリットがあっても、更新料の支払いが、賃貸借契約の効果を強めるものと解釈される可能性があります。つまり、更新料が支払われる建物賃貸借更新契約が繰り返されている場合、その後、大家が、正当事由があると主張して建物明渡しを求めた場合でも、更新料の支払いを繰り返した借家人は、継続使用(契約更新)が前提の建物賃貸借契約だったとして、明け渡しに応じなかったり、高額な立退料を求めたり、強気の姿勢をとる原因ともなります。

したがって、大家の立場では、更新料の支払いは、デメリットも考慮したうで、設定する必要があります。

2. 借地人から見た、借地での更新料

借地の場合も、地主は、具体的な更新料の定めがある場合は更新料の請求ができ、更新料の定めがなかったり具体的な金額が決まっていなかったりする場合は請求できない、という点は、借家とほぼ同じです。

ただ、借地は、契約期間が長期間のため、世代をまたぐことが多く、そもそも契約書がない、過去の更新の事実関係につき誰も知らない、ということがあります。

また、更新料の具体的定めがあっても、借地人が、長期間にわたって、定められた更新料の支払いをせずに、地主も、放置していることはまれではありません。いつ法定更新になったのか、正確には分からない事例もあります。

更新料が支払われていない(更新契約がされていない)状態で、借地人が第三者に借地権を譲渡する方法で借地の処分を希望した場合、譲渡承諾の希望を受けた地主は、過去の法定更新の際に支払われる可能性があった更新料を請求することがあります。

ところが、借地権を第三者に譲渡する際に、地主、借地人、及び借地権譲受人との間の裁判外の交渉が成立しなかったために、裁判所に対し、土地賃借権譲渡許可申立(借地借家法19条1項)を行った場合では、基本的に、更新料の支払いの有無については、承諾料の増額理由としても、あまり考慮されてはいません。

裁判所の土地賃借権譲渡許可が確定した場合、理論的には、更新料が支払われなかったことに関してする紛争は、借地権譲受人にそのまま引き継がれることになります。しかし、多くの場合、借地権価格の1割に相当する譲渡承諾料が既に支払われているため、地主と借地権譲受人との間に、更新料に関する深刻な紛争が継続することは少ないようです。

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