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- 家族信託が適切な事案もあります
1. 信託とは
信託とは、委託者が受託者に対して財産権の移転その他の処分をし、一定の目的(信託目的)に従って、受託者が受益者(委託者自身又は第三者)のために当該財産(信託財産)の管理、処分をすることをいう(信託法改正要綱試案 補足説明)。
簡単にいうと、息子(受益者)の生活安定のため(信託目的)に、私(委託者)の不動産の所有権を、適切に管理・処分してもらうために、友人(受託者)に移す、というようなものです。
信託は、所有権等の権利自体を受託者に移転して、適切な処分をお願いするものなので、売却も貸付も担保に入れての借入れも、色々なことが可能です。
また、現在では、業としてでなければ、受託者は、誰でも良くなりました。つまり、家族を受託者、子供に財産を移転して、管理や投資を委ねる等という、多様なニーズに応えられる制度として、注目を集めていいます。
しかしながら、信託は、受託者という第三者が必須のため、手続きが複雑で、移転登記等の費用もかかります。
また、受託者(第三者)が長期に渡り不正をしないことを監視することも大変です。さらに、税制上も不利で(相続税法9条の2から5他)、遺留分を侵害できないという制限もあり、魔法の方法というわけではありません。
さらには、長期間(30年以上も予定している。信託法91条)に生じる、死亡の順序等という様々な変化を想定した契約を作ることも容易ではありません。ただし、この点は、遺言書作成等でも同様です。
家族信託を実施するか否かについては、成年後見、任意後見、管理の委託、配偶者居住権、遺言、遺留分等、他の手段でも目的を達成できるか、費用はどうか制約がないか等、さらには、そもそも投資や相続(税)対策までする必要があるのか等様々な要素を、不動産の収益や処分、法務、税務等の各専門家とともに検討する必要があります。
2. 信託でしかできないこと
信託でしかできないこととしては、受益者連続型があります。
A=財産のある人
B=Aさんの子供(Bさんに子供(Aさんの孫)がいないが妻はいる)
C=Aさんの子供(Cさんに子供(Aさんの孫)がいる)
Aさんは、自分が死んだ後、子供であるBさんが財産を使うことは当然だが、Bさんの配偶者やBさんの配偶者の兄弟に財産が移っていくことは、避けたい(親族ではない人には財産を渡したくない。)と思っているとします。
そこで、Aさん(委託者)は、Cさん(受託者)に財産を移し、Bさん(受益者)が使用収益できるとする、という家族信託を開始します。
そして、Aさん、次いで、Bさんが亡くなった場合、受益者がCさん又はCさんの子供に移ると指定しておきます。同時に、Cさんが死亡したときは、Cさんの子供が受託者となることも契約しておきます。
または、Bさんが亡くなった場合、信託を終了し、信託財産はCさん又はCさんの子供に移す、ということでも良いでしょう。
こうすれば、Aさんの親族ではない人には財産を相続させない、という目的は達成できます。
そして、こうした財産承継は、遺言等では実現できません。
ただし、税制上は、BさんもCさん(又はCさんの子供)も、受益権を得たときに、Aさんから相続したこととなって、2回分の相続税がバッチリかかります。Bさんへの相続税課税の際に、死ねばCさんに行くこと等は、相続税法上は、考慮されないからです。
では、BさんがAの後妻さん、CさんがAさんと先妻との子供のときはどうでしょう。
上記のような家族信託を利用すれば、どのような資産でも、Bさんが使って、その後Cさんに行くということはできます。しかし、自宅を使わせたい場合は、配偶者居住権制度を使った方が、税制上、有利になります。
3. 管理委託型等
認知症等で意思能力が無くなった場合、自分では預金の引き出しも、不動産の売却も、相続税対策もできなくなります。
一般的には、認知症の生活維持は、成年後見制度(法定後見と、任意後見)で対応します。
認知症発症前に、自身を受益者、親族等を受託者として財産管理を任すことも考えられます。この場合、財産の処分は、基本的には制約なくできます。成年後見制度では不可能な、借り入れを伴う相続税対策も可能です。
しかしながら、10億以上の財産で、外国税制等も使用する相続対策ができるのであればともかくとして(ただし、最近の相続税法改正で、ほとんど抜け穴が無くなったようですが。)、大きくない財産での相続税対策での失敗が、平成以降、多数見られました。
家族信託ではありませんが、生命保険金は、毎月定額で支払ってもらい、生活を安定させるという信託もあります。これは、障害がある子どもに生活を安定させる等の目的で使用されています。
しかしながら、この制度でも、受託者が大企業で倒産や背任の可能性が低いのですが、超長期では、インフレ等のリスクがあります。
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