相続と、遺贈、死因贈与は、亡くなった人の財産の引き継ぎという点で似ているのですが、相続は包括的な地位移転として地主の承諾は不要(原則として名義書換料も発生しない)ですが、遺贈、死因贈与では、個別の譲渡として、地主の承諾が必要です。なお、相続同様の包括的な地位移転である会社の合併、分割でも、原則として、地主の承諾は不要です。
地主が承諾しない場合、遺贈では、遺言書を作成した人は、亡くなっていますので、借地非訟事件(譲渡許可。借地借家法19条1項)の申立はできません。そこで、亡くなった遺贈者ではなく、遺言執行者が申立人譲渡人となります。申立人は、 亡●●遺言執行者〇〇との記載で、譲受候補者は、遺言執行者と同じ人の場合でも、肩書なしの○○で、違いが生じます。
ところが、遺言執行者を申立人、地主を相手方、受遺者を譲り受け候補者とする、借地非訟事件(譲渡許可)は、次のようなところが、微妙で、遺言執行者の権原を定めた民法1012条(1項 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有する。)だけでは、一義的には不明で、調べても分かりません。
1. 和解ができるのか
遺言執行者が明渡料として金をもらい、それを受遺者に引き継ぎことで良いのか?
借地非訟での和解も「遺言の内容の実現」の一部にも思えますが、地主に譲渡承諾をしてもらって地主と譲受人で和解してもらった方が良いようにも思います。
2. 譲渡許可がでない場合どうなるのか
譲渡許可がでなければ、すぐに譲渡できない借地権が相続人に残ることになります。譲渡許可が出ない理由によっては他の譲り受け候補者を探すこともできますが、他人への譲渡ができそうもない相続人は、建物の取り壊し費用等を負担せざるを得ない場合があるのでしょう。
もし、上記だとすると、相続人は、思わぬ負担が生じる可能性がありそうです。
3. 地主が明渡し訴訟を起こす場合の被告は?
地主が借地の存在を争い、明け渡し訴訟を起こす場合、被告は、遺言執行者で良いのか、相続人になるのか。遺言執行の効果は相続人に帰属するので(民法1015条)、遺言執行者にする必要はないと思うのですが、どうか?
借地非訟の専門の文献を見ても、分からないことは多くあります。