借地権アパートの売却は難しい?
スムーズに手放す秘訣と注意点

「借地権付きのアパートを売却したいけれど、手続きが複雑で難しそう」「不動産会社に相談しても敬遠されてしまった」など、お悩みではありませんか?
借地権アパートの売却には、地主の承諾や買主の住宅ローン審査といった特有のハードルがあり、所有権の物件に比べて売却が難しいのは事実です。
しかし、正しい知識と手順を知れば、スムーズかつ有利な条件で手放すことは十分に可能です。
 
この記事では、まず売却を阻む「3つの壁」の正体を明らかにし、その上であなたの状況に合わせた最適な売却方法(仲介・買取・地主への売却など)を具体的に解説します。さらに、売却価格の相場の調べ方から、トラブルを避けるための地主との交渉術、後悔しないためのチェックリストまで網羅。
最後までお読みいただくことで、複雑な借地権アパート売却の全体像を理解し、不安を解消して売却成功への第一歩を踏み出せるようになります。

【この記事のまとめ】

  • 借地権アパートが売れにくいのは「3つの壁」がある
    地主の承諾(譲渡承諾料)・買主のローン審査の厳しさ(地代/更新料の不安)・不動産会社が手間とリスクで敬遠しがちな点が、売却を難しくします。
  • 状況に合う売却方法を選ぶのが最短ルート
    高く売りたいなら仲介、早く現金化なら専門買取、地主と良好なら地主へ売却、条件が合えば底地と同時売却で所有権として高値も狙えます。
  • 成功の鍵は事前準備と交渉・専門家活用
    借地契約書の確認(譲渡・増改築・地代等)を行い、譲渡承諾料の相場を踏まえて交渉し、難航時は借地非訟も視野に。査定は複数社で比較し、必要に応じて弁護士・税理士も活用します。

監修
宅地建物取引士 坂東裕

2013年より不動産業に従事。
2015年に宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーを取得。

地主交渉のスペシャリスト。借地権にとどまらず、事故物件、収益ビル、倉庫、アパート等、各種不動産売買に精通している。
累積取引数は300件を超える。

趣味は不動産と料理。得意料理はイタリアン。

監修
宅地建物取引士 坂東裕

2013年より不動産業に従事。
2015年に宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーを取得。

地主交渉のスペシャリスト。借地権にとどまらず、事故物件、収益ビル、倉庫、アパート等、各種不動産売買に精通している。
累積取引数は300件を超える。

趣味は不動産と料理。得意料理はイタリアン。

なぜ売れない?借地権アパート売却を阻む3つの壁

借地権付きアパートの売却は、一般的な所有権の不動産と比べて「売りにくい」と言われることが少なくありません。
その背景には、借地権特有の権利関係の複雑さや法的な制約が存在します。
なぜ売却がスムーズに進まないのか、まずは売主様が直面する3つの大きな壁について正しく理解することから始めましょう。

最大の難関 地主の承諾と譲渡承諾料の問題

借地権付きアパートを第三者に売却する際、法律上、原則として土地の所有者である地主の承諾が必要不可欠です
この「地主の承諾」が、売却における最初の、そして最大のハードルとなります。地主との関係性が良好でない場合や、地主側に何らかの事情がある場合、承諾そのものが得られず、売却活動が完全にストップしてしまうリスクがあります。
 
さらに、承諾を得る際には、慣習として「譲渡承諾料(名義変更料)」を地主に支払う必要があります。
この費用に法的な定めはありませんが、相場は借地権価格の10%程度とされており、売主にとっては大きな金銭的負担となります。
例えば、借地権価格が2,000万円の場合、200万円もの承諾料が発生する可能性があるのです。
この費用負担が、売却への意欲を削いでしまう一因にもなっています。

買主側の不安要素 住宅ローン審査と将来の更新料

次に、買主側の視点から売却を難しくしている要因を見ていきましょう。最大の障壁は、住宅ローンの審査です。
 
金融機関は、借地権付き物件を担保として評価する際に慎重な姿勢を示します。なぜなら、土地の所有権がないため担保価値が低く評価されがちなうえ、地代の滞納などによる契約解除のリスクを懸念するためです。
 
また、買主は物件購入後も継続的に発生する費用に不安を感じます。所有権物件との違いを以下の表で確認してみましょう。
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費用項目 所有権アパート 借地権アパート
地代 なし 毎月発生
契約更新料 なし 契約更新時に発生
譲渡承諾料 なし 売却時に発生
建替・増改築承諾料 なし 工事の際に発生する場合がある
このように、地代や数十年ごとに発生する更新料といった、所有権物件にはない将来的な金銭的負担が、買主の購入意欲を削ぐ大きな要因となっています。

不動産会社が取り扱いを敬遠する理由

最後に、売却のパートナーとなるべき不動産会社側の事情も、売却を困難にする壁の一つです。
 
借地権の取引は、地主との交渉、権利関係の調査、複雑な契約書の作成など、通常の不動産売買に比べて専門的な知識と多大な手間を要します
地主との交渉が難航したり、買主への説明が不十分だったりすると、大きなトラブルに発展するリスクも抱えています。
 
また、借地権アパートは所有権物件に比べて売買価格が低くなる傾向があり、不動産会社が受け取る仲介手数料もそれに比例して少なくなります。
手間とリスクが大きい一方で、得られる収益が少ないため、多くの不動産会社は借地権付き物件の取り扱いを敬遠しがちです。結果として、売却を依頼しても積極的に動いてもらえなかったり、最悪の場合、取り扱い自体を断られたりすることもあり、売主は不動産会社探しにも苦労することになります。

【状況別】借地権アパートの最適な売却方法を見つける

借地権付きアパートの売却は、所有権の不動産と異なり、その方法が一通りではありません。
売主様が置かれている状況や地主との関係性、そして「何を最優先するか」によって、選ぶべき最適な手段は大きく変わってきます。
ここでは、代表的な4つの売却方法をメリット・デメリットと共に詳しく解説します。
ご自身の希望に最も近い方法を見つけるための参考にしてください。

少しでも高く売りたいなら「仲介」での売却

「仲介」とは、不動産会社に依頼して、一般市場からアパートの購入希望者を探してもらう最も一般的な売却方法です。
時間をかけてでも、できるだけ市場価格に近い高値で売却したい場合に適しています。
 
最大のメリットは、買取などに比べて売却価格が高くなる可能性がある点です。
しかし、借地権物件は買主側が住宅ローンを利用しにくいという大きなハードルがあります。
金融機関が土地を担保に取れないため、融資審査が厳しくなるのです。そのため、現金購入できる買主や、借地権に理解のある投資家などにターゲットが限定され、売却までに長期間を要するケースが多いことを覚悟しなければなりません。
また、売買契約には地主の「譲渡承諾」が必須となり、別途、譲渡承諾料(借地権価格の10%程度が目安)が必要になる点も注意が必要です。

早く現金化したいなら「専門業者による買取」

「買取」は、借地権付き物件を専門に扱う不動産会社(買取業者)に直接アパートを買い取ってもらう方法です。
とにかく早く物件を手放して現金化したい場合に最適な選択肢と言えるでしょう。
 
最大のメリットは、その圧倒的なスピード感にあります。買主を探す必要がないため、査定から最短数週間~1ヶ月程度で売却が完了します。
また、地主との厄介な交渉を買取業者が代行してくれるケースが多く、売却後の建物の不具合に関する責任(契約不適合責任)が免除されるのも大きな利点です。一方で、デメリットは売却価格が仲介に比べて安くなる傾向があることです。
買取業者は再販を目的として購入するため、価格は市場価格の6~8割程度になるのが一般的です。

地主との関係が良好なら「地主への売却」も視野に

地主自身に借地権を買い取ってもらう方法です。長年にわたり良好な関係を築けているのであれば、有力な選択肢の一つとなります。
地主にとっては、借地権を買い戻すことで土地の所有権が完全なものとなり、土地を自由に活用できるようになるというメリットがあります。
 
売主側のメリットとしては、第三者へ売却する際に必要な譲渡承諾料が不要になる点が挙げられます。
買主を探す手間も省け、スムーズに話が進む可能性があります。ただし、これは地主に買い取る意思と資金力がある場合に限られます。
また、当事者間での取引となるため、客観的な価格設定が難しく、相場より安い価格での売却になってしまう可能性もあるため、交渉は慎重に進める必要があります。

究極の手段「底地との同時売却」で所有権として売る

「同時売却」とは、借地人(あなた)の持つ「借地権」と、地主が持つ「底地権」をセットにして、完全な「所有権」の不動産として第三者に売却する方法です。これは、借地権アパートを最も高く売却できる可能性を秘めた方法と言えます。
 
買主は完全な所有権を手に入れられるため、住宅ローンの利用も容易になり、買い手が格段に見つかりやすくなります。
その結果、借地権単体で売却するよりも、はるかに高値での取引が期待できるのです。
しかし、この方法の実現には地主との緊密な協力関係と、売却に対する双方の合意が絶対条件です。
売却価格の配分(地主と借地人の取り分)などで意見が対立し、交渉が難航するケースも少なくありません。
地主側にも土地を売却する意思がある場合にのみ検討できる、ハードルの高い方法です。
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各売却方法の比較表
売却方法 価格の傾向 売却スピード メリット デメリット
仲介 高い 遅い 市場価格に近い高値が期待できる 買主が見つかりにくい、地主の承諾と承諾料が必要
専門業者による買取 安い 早い 現金化が早い、地主との交渉を任せられる、契約不適合責任が免責 売却価格が安くなる傾向がある
地主への売却 交渉次第 早い 譲渡承諾料が不要、買主を探す手間がない 地主に買取意思と資金力がないと成立しない、価格が安くなる可能性
底地との同時売却 最も高い 交渉次第 所有権として売却でき最も高値が期待できる 地主との完全な合意が必須で実現のハードルが高い

あなたの借地権アパートはいくら?売却相場の調べ方

借地権付きアパートの売却価格は、所有権の不動産のように単純ではありません。
土地の所有権がないため、その価値をどう評価するかが重要になります。
ここでは、ご自身の物件がいくらで売れるのか、その相場を知るための基本的な計算方法と、より正確な価格を把握するための必須知識を解説します。

借地権価格の基本的な計算方法

借地権の価格を算出するには、主に「相続税路線価」を基準にする方法が用いられます。これはあくまで税額計算上の評価額ですが、売買価格を決める上での重要な指標となります。ただし、実際の取引価格(実勢価格)は、立地条件、建物の状態、地主との契約内容、そして買主の需要など様々な要因によって変動するため、計算結果はひとつの目安として捉えましょう。
 
主な計算方法は以下の通りです。
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計算方法 概要 計算式
相続税路線価方式 国税庁が定める路線価と借地権割合を用いて計算する方法。最も一般的で、目安を把握しやすい。 自用地評価額(路線価 × 土地面積) × 借地権割合 = 借地権価格
収益還元法 アパートの家賃収入から将来得られると期待される利益を基に、物件の価値を算出する方法。投資用物件として評価する際に用いられる。 (年間家賃収入 − 年間経費) ÷ 還元利回り = 収益価格
「路線価」および「借地権割合」は、国税庁のウェブサイトで公開されている「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
路線価図に記載された「150C」のような記号は、「路線価が1平方メートルあたり15万円」で「借地権割合が70%(記号Cの場合)」であることを示します。

正確な査定額を知るには複数社への依頼が必須

前述の計算方法で算出できるのは、あくまで机上の価格です。借地権アパートという専門性の高い不動産の適正な売却価格を知るためには、必ず複数の不動産会社に査定を依頼することが不可欠です
 
複数社に依頼すべき理由は以下の通りです。

  • 会社による査定額の差を知るため:借地権の取り扱い経験や販売戦略によって、不動産会社が提示する査定額は大きく異なる場合があります。1社だけの査定では、その価格が適正かどうか判断できません。
  • 担当者の知識や経験を見極めるため:査定額の根拠を具体的に質問することで、その会社の担当者が借地権取引に精通しているかを見極めることができます。信頼できるパートナー探しにも繋がります。
  • 多様な売却戦略を比較するため:仲介による売却だけでなく、専門業者による買取など、会社によって得意な売却方法は様々です。複数の選択肢を比較検討することで、ご自身の状況に最も合った売却方法を見つけられます。
査定には、物件情報から概算額を出す「机上査定」と、実際に現地を訪問して詳細な価格を算出する「訪問査定」があります。
まずはインターネットの一括査定サイトなどを利用して複数の会社に机上査定を依頼し、その中から対応が良く、借地権に詳しそうな2~3社に絞って訪問査定を依頼するのが効率的です。
訪問査定では、建物の状態や周辺環境、地主との関係性なども含めて総合的に評価されるため、より実勢価格に近い、精度の高い査定額が期待できます。

地主との交渉を円滑に進めるための事前準備と交渉術

地主との交渉を円滑に進めるための事前準備と交渉術
借地権アパートの売却を成功させるためには、地主との良好な関係と円滑な交渉が不可欠です。
感情的な対立を避け、スムーズに話を進めるためには、事前の準備と交渉のポイントをしっかり押さえておく必要があります。
ここでは、地主との交渉を有利に進めるための具体的な方法を解説します。

まずは借地契約書の内容を徹底的に確認する

地主との交渉を始める前に、全ての土台となるのが「借地契約書」です。契約書の内容を正確に把握しないまま交渉に臨むと、不利な条件を提示されたり、思わぬトラブルに発展したりする可能性があります。
まずは契約書を隅々まで読み込み、以下の項目を必ず確認してください。
スクロールできます→
確認項目 チェックするポイント
借地権の種類 旧法借地権か、普通借地権か、定期借地権か。種類によって権利の強さや売却のしやすさが大きく異なります。
契約期間と残存期間 残りの契約期間がどのくらいあるかを確認します。残存期間が短いと売却価格に影響が出ることがあります。
譲渡・転貸に関する特約 「第三者への譲渡・転貸を承諾する」という条項の有無を確認します。承諾が必要な場合、譲渡承諾料に関する記載も確認しましょう。
増改築禁止特約 建物の増改築に関する制限の有無を確認します。買主がリフォームや建て替えを検討している場合に重要になります。
地代・更新料 現在の地代や更新料の金額、支払い状況を確認します。滞納がある場合は、売却前に清算する必要があります。
もし契約書を紛失してしまった場合でも、地代の支払いを証明できる書類(領収書や振込明細)や、建物が自己名義で登記されていることを証明できれば、借地権の存在を主張することは可能です。

譲渡承諾料の相場と交渉のポイント

借地権を第三者に売却する際には、地主の承諾を得る対価として「譲渡承諾料」を支払うのが一般的です。この承諾料をめぐって地主との交渉が難航するケースも少なくありません。スムーズに合意するためにも、相場観と交渉のポイントを理解しておきましょう。
 
譲渡承諾料の一般的な相場は、借地権価格のおおむね10%程度とされています。例えば、更地価格が3,000万円で借地権割合が60%の土地であれば、借地権価格は1,800万円となり、その10%である180万円前後が譲渡承諾料の目安となります。
 
地主との交渉では、以下の点を意識することが重要です。
  • 良好な関係を築く:高圧的な態度は禁物です。これまでの感謝を伝え、売却に至った経緯を丁寧に説明し、誠実な姿勢で交渉に臨みましょう。
  • 相場を提示する:上記の相場を根拠として提示し、法外な金額を要求された場合は冷静に交渉します。
  • 買主の情報を伝える:買主がどのような人物で、社会的信用があるかなどを伝えることで、地主の不安を和らげることができます。
  • 専門家を同席させる:当事者同士では話がまとまりにくい場合、借地権に詳しい不動産会社の担当者に同席してもらうのも有効な手段です。

交渉が難航した場合の対処法 借地非訟手続とは

誠実に交渉を重ねても、地主が正当な理由なく譲渡を承諾してくれない場合があります。そのような場合に、最終手段として検討するのが「借地非訟(しゃくちひしょう)手続」です
 
借地非訟手続とは、地主の承諾に代わる許可を裁判所に求める法的な手続きです。裁判所が、借地権を譲渡しても地主に不利になる恐れがないと判断した場合、地主の承諾がなくても売却を認める決定を出してくれます。
 
手続きの主な流れは以下の通りです。
  1. 裁判所への申立て:物件の所在地を管轄する地方裁判所に申立書を提出します。この際、既に購入希望者が決まっていることが条件となります。
  2. 審問期日:裁判官が借地人(申立人)と地主(相手方)双方から事情を聴取します。
  3. 鑑定委員会の意見聴取:裁判所が選任した不動産鑑定士などの専門家が、適正な譲渡承諾料などについて意見を述べます。
  4. 裁判所の決定:審理を経て、裁判所が譲渡を許可するかどうかの決定を下します。許可する場合は、譲渡承諾料の額も定められます。
ただし、この手続きは時間と費用(弁護士費用など)がかかる上、地主との関係が悪化する可能性があるため、あくまで最終手段と考えるべきです。
まずは専門家を交えて、粘り強く話し合いでの解決を目指すことが賢明です。

借地権アパート売却で後悔しないための重要チェックリスト

借地権付きアパートの売却は、所有権の不動産とは異なる特有の注意点が多く存在します。
手続きを安易に進めてしまうと、後から「こんなはずではなかった」と悔やむ事態になりかねません。
この章では、売却後に起こりうるトラブルを未然に防ぎ、安心して取引を終えるための重要なチェック項目を解説します。

契約不適合責任のリスクを理解する

2020年4月の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと変わりました。これは、売却したアパートが契約内容と異なる状態であった場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。特に築年数が経過したアパートでは、雨漏り、シロアリの害、給排水管の故障といった物理的な不具合から、事件・事故の履歴といった心理的なものまで、様々なリスクが潜んでいます。
 
買主は、契約内容との不適合を発見した場合、売主に対して追完請求(修理の要求)、代金減額請求、損害賠償請求、そして契約解除を求める権利があります。こうした事態を避けるため、売主は事前に建物の状況を正確に把握し、告知書(物件状況報告書)へ正直に記載する義務があります。専門家によるホームインスペクション(建物状況調査)を実施し、建物のコンディションを客観的に評価してもらうことも有効な対策です。
 
ただし、専門の不動産業者に直接買い取ってもらう場合は、この契約不適合責任が免責されるケースが多いという大きなメリットがあります。
不具合の可能性がある物件をスピーディかつ安心して手放したい場合には、買取も有力な選択肢となるでしょう。
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主な契約不適合の例 売主が取るべき対策
雨漏り、建物の傾き、シロアリの害 ホームインスペクションの実施、修繕履歴の明示
給排水管・ガス管の故障や腐食 設備の状態を告知書に正確に記載、動作確認
過去の事件・事故(心理的瑕疵) 把握している事実を正直に告知する

建物の増改築や建て替えに関する制約

借地権付きの建物は、所有権の物件のように地主の承諾なしに自由に増改築や建て替えができないという大きな制約があります。これは買主にとって、将来的なリフォーム計画や資産価値に直接影響する非常に重要なポイントです。
 
借地契約書に「増改築禁止特約」が盛り込まれている場合、リフォームや建て替えを行うには地主の承諾が必須となります。その際、一般的に「増改築承諾料」や「建替承諾料」といった費用が発生します。承諾料の相場は、更地価格の3%~5%程度とされていますが、あくまで地主との協議によって決まります。 売却活動を始める前に、必ず借地契約書を確認し、増改築に関する条項を把握しておきましょう。
買主へ正確な情報を提供することが、後のトラブルを避ける鍵となります。

相続物件の場合は権利関係を明確にする

親などから相続した借地権アパートを売却する場合、売却の前提として権利関係が整理されていることが不可欠です。相続人が複数いるにもかかわらず、遺産分割協議が済んでいない、あるいは建物の相続登記(所有権移転登記)が完了していない状態では、売却手続きを進めることはできません。
 
まず、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がアパートを相続するのかを決定し、「遺産分割協議書」を作成します。その後、法務局で建物の名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へ変更する「相続登記」を必ず完了させてください。共同名義のまま売却することも可能ですが、売却活動や契約手続きにおいて相続人全員の同意と実印が必要となり、非常に煩雑になります。可能な限り、代表者1名の単独名義にしておくことがスムーズな売却に繋がります。
 
なお、借地権自体の相続については地主の承諾は不要ですが、トラブル防止の観点から、建物の名義人が変わったことは地主へ報告しておくのが賢明です。

専門家を味方につけて借地権アパートの売却をスムーズに

専門家を味方につけて借地権アパートの売却をスムーズに
権利関係が複雑に絡み合い、地主との交渉も不可欠な借地権アパートの売却は、不動産取引の中でも特に専門性が高い分野です。
知識や経験が不足したまま進めてしまうと、売却価格が不当に低くなったり、後々トラブルに発展したりするリスクがあります。
売却活動を有利かつ円滑に進めるためには、借地権に精通した専門家のサポートが欠かせません。
ここでは、信頼できる専門家の選び方と、それぞれの役割について詳しく解説します。

借地権に精通した不動産会社の選び方

借地権付きの物件は取り扱いが難しいため、一般的な不動産会社の中には仲介を敬遠するところも少なくありません。だからこそ、借地権の売買実績が豊富な、専門知識を持つ不動産会社をパートナーに選ぶことが成功の第一歩となります。
以下に、相談すべき不動産会社を見極めるためのチェックポイントをまとめました。
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チェックポイント 確認すべき具体的な内容
借地権の取引実績 会社のウェブサイトで過去の取引事例を確認する。特にアパートのような収益物件の実績が豊富かどうかが重要です。
専門知識と提案力 担当者が借地権割合や譲渡承諾料、借地借家法といった専門用語を正確に理解し、分かりやすく説明できるか。仲介だけでなく、専門業者への買取といった選択肢も提示してくれるかを確認しましょう。
地主との交渉力 過去に地主とどのような交渉を行ってきたか、具体的な経験を尋ねてみましょう。感情的になりがちな交渉を、冷静かつ論理的に進めるスキルがあるかを見極めます。
査定価格の根拠 提示された査定額について、その算出根拠を明確に説明できるか。近隣の取引事例や路線価、借地権割合などを基にした、納得感のある説明が求められます。
専門家との連携 弁護士や税理士、司法書士といった他の専門家との連携体制が整っているか。トラブル発生時にも迅速に対応できるネットワークを持っている会社は信頼できます。
最低でも3社以上に査定を依頼し、各社の対応や査定内容を比較検討することで、最も信頼できるパートナーを見つけやすくなります。

必要に応じて弁護士や税理士に相談する

借地権アパートの売却では、不動産会社だけでは対応しきれない法律問題や税務問題が発生することがあります。状況に応じて、弁護士や税理士といった専門家にも相談することを検討しましょう。

弁護士に相談すべきケース

地主との間でトラブルが発生した場合や、法的な手続きが必要になった場合は、弁護士が心強い味方となります。
特に、以下のような状況では早期の相談が推奨されます。
  • 地主が売却の承諾(譲渡承諾)を拒否している
  • 提示された譲渡承諾料が相場よりも著しく高額で、交渉が難航している
  • 契約内容を巡って地主と見解の相違がある
  • 法的な強制力を持つ「借地非訟手続」を検討している
地主との関係が悪化してしまうと、個人での交渉は非常に困難になります。交渉が行き詰まる前に弁護士に相談することで、代理人として冷静に交渉を進めてもらい、法的な観点から最適な解決策を提案してもらえます。

税理士に相談すべきケース

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、所得税や住民税が課税されます。借地権の売却は計算が複雑になることが多いため、税務の専門家である税理士への相談が有効です。
  • 売却によってどれくらいの税金が発生するのか正確に知りたい
  • 相続した借地権アパートの売却で、取得費が不明な場合
  • 居住用財産の3,000万円特別控除など、利用できる税金の特例について確認したい
  • 売却で得た資金の活用法や、今後の資産運用について相談したい
特に相続が絡む案件や、アパート経営による事業所得がある場合は、確定申告の手続きも複雑になります。事前に税理士に相談し、適切な節税対策を講じることで、手元に残る資金を最大化できる可能性があります。不動産や相続に強い税理士法人などに相談すると良いでしょう。

まとめ

本記事では、借地権アパートの売却が難しいとされる理由から、具体的な売却方法、地主との交渉術、そして後悔しないための注意点までを網羅的に解説しました。借地権アパートの売却は、「地主の承諾」「買主の住宅ローン審査」「不動産会社の専門知識」という3つの大きな壁が存在するため、所有権の物件に比べて複雑な手続きと交渉が必要になるのが実情です。
 
しかし、売却が不可能というわけではありません。成功の鍵は、ご自身の状況に合った最適な売却方法を見極めることです。少しでも高く売りたいなら「仲介」、早期現金化を望むなら「専門業者による買取」、地主との関係が良好なら「地主への売却」など、複数の選択肢を検討しましょう。特に、地主との交渉は売却プロセス全体を左右する最も重要な要素であり、事前の準備と専門的な知識が不可欠です。
 
借地権アパートの売却で最も確実な一歩は、借地権の取り扱いに精通した専門の不動産会社に相談することです。まずは複数の専門業者に査定を依頼し、ご自身の物件の正確な価値を把握すると同時に、信頼できるパートナーを見つけることから始めましょう。専門家を味方につけることで、複雑な手続きや交渉もスムーズに進み、納得のいく価格での売却が実現可能になります。
 
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