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1. 地主の高齢化に伴う諸問題
借地人から地主への連絡を、地主の高齢化に伴い、地主の親族を通して行なっている、ということも珍しくありません。地主が高齢の場合、借地人が土地を借り続ける意向の場合は、それでも、それほど問題はありません。しかし、借地を処分したい場合は、地主が高齢であることで、いくつかの問題が生じます。
高齢の場合は、相続を見越して、借地となっている土地の処分については、消極的になることが多いものです。そのため、地主が借地を買い取ることで土地の有効利用ができる場合でも、積極的に動こうとしない場合があります。
また、地主が認知症で判断能力がないのに成年後見人がついていない場合、任意で譲渡承諾してもらうことはできませんし、相続人になるかもしれない人全員から同意をもらうことも考えられますが、リスクはあります。裁判所に借地権の譲渡許可(借地非訟事件)の申立をする際にも、50万円程度の費用を特別に払って、借地人側で特別代理人を選任する等の方法により、対応しなければなりません。
地主が死亡した場合は、後述するように、相続に伴い手続が煩雑になることもありますが、上記のような問題はなくなります。
地主の相続人が、借地を必要としていない場合、あるいは、近隣の土地も相続した場合は、借地をある程度の規模で処分することも考えられるので、借地人にとっては、地主の生前よりも、有利に話が進むこともありえます。
高齢の地主の死亡は、地主の相続人と借地人にとって、財産の処分という意味では、有効な機会です。
2. 地主が死亡したら
A. 借り続けたい場合
地主が死亡した場合、借り続ける意向のある借地人であれば、地代の支払い先が変更になること等以外は、特に支障ないのが通常です。
ただし、口座が止まってしまって地代の支払いができない、あるいは地代を持参していたが地主が死亡して持参払いができなくなった場合は、弁護士等に依頼して相続人調査を行い、相続人がいれば後述するとおり地代の支払いを行い、不明であれば、債権者不確知等を原因として供託をします。
B. 借地権を処分したい場合
地主死亡後、借地権を処分する場合には、いろいろな問題が生じます。
地主の相続人全員がまとまって、借地権譲渡を承諾したり、借地権を買ったり、底地を売ってくれたり、等価交換に応じてくれる場合は、問題ありませんが、当事者が増えるため、なかなかうまく行きません。
借地権の処分は、地主の譲渡承諾をもとめることが原則ですが、地主側が承諾しない場合には、借地非訟事件申立となります。そこで、まず借地権の譲受先(多くは不動産業者)を見つけたら、弁護士に依頼し、申立の前提として、地主の相続人調査を行います。
地主の相続人が1名の場合は、その唯一の相続人を借地非訟事件の相手方とします。
相続人が2名以上いる場合は、その調査にも時間がかかることがあります。特に地主に子どもがおらず、兄弟姉妹やその子どもが相続人となっている場合には、調査にもコストがかかります。
借地人としては、亡くなった地主の遺産分割手続が行われるまで多少待つことになりますが、遺産分割には時間がかかったり、あるいは、地主側が何もしないまま放置しているという場合もあります。
そのような場合は、ひとまずは、相続人全員に対して交渉の申入れ、必要な場合は、借地非訟事件の申立を行います。
借地非訟事件の進行での特別なことには、次のようなものがあります。
まずひとつめは、高齢の地主の相続人が、その兄弟姉妹の場合は、同じく高齢の地主という問題が生じます。
次に、地主側全員が一致しないと、和解も介入権行使もできません。
そのため、地主の死亡は、ときには財産の処分という点で大きな機会となりますが、いろいろなリスクと手間がかかるので、借地権の処分を検討している場合には、できるだけ早く、手慣れた不動産業者に相談することをお勧めします(借地上の建物の維持管理という意味でも、放置しておくのは避けたほうがいいです)。
C. よくある相続人からの連絡内容
地主が死亡したことをきっかけに、相続人である新しい地主から、地代の増額の申し入れがあったり、契約書の書き換えを依頼されたりすることもあります。ずるい地主側は、以前の契約書よりも、地主側に有利な条項に変更しようとするので、注意が必要です。
基本的に、地代については、地主が勝手に増額することはできませんので、単なる増額の申入れや、契約条項の変更に応じる法的義務はありません。
しかし、近傍よりも明らかに安い地代である場合は、地代増額調停を申し立てられる可能性はありますし、不当に安価であれば、後々、使用貸借に等しいと判断される可能性もあります。不当に安価であれば、ある程度の増額交渉に応じておくことも検討したほうがよいでしょう。なお、不当に安価かどうかは、素人では判断できませんので、不動産業者に相談されることをお勧めします。
契約内容は、従前の契約が相続人に引き継がれますので、原則として契約書の書き換えに応じる必要はありません。
借地権の処分を検討している場合は、早めに借地に関する経験がある不動産業者に相談しましょう。
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