借地非訟とは?種類や費用、譲渡許可の流れをわかりやすく解説

「借地を売却したいけど地主が承諾してくれない」「建物を建て替えたいのに許可が下りない」といった借地権に関するお悩みを抱える方は少なくありません。このような地主との交渉が難航するケースでは、「借地非訟」という法的手続きを利用することで解決できる可能性があります。

本記事では、借地非訟の基礎知識から申立ての種類、必要な費用、手続きの流れまでをわかりやすく解説します。これを読めば、借地権に関するトラブルへの対処法や、スムーズな解決に向けた選択肢が明確になるはずです。地主との関係を維持しながら借地権の問題を解決したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

【この記事のまとめ】

  • 借地非訟とは、借地人が地主の承諾を得られない場合に、借地の利用変更や譲渡などを裁判所に求める手続きです。
    専門家の意見を踏まえ、当事者間の円満な法的解決を目指します。
  • 借地非訟には、借地権の譲渡や建て替え、増改築など、目的に応じた6種類の申立てがあります。
    地主の承諾が得られぬ際、裁判所の許可を得ることで借地人の権利行使を可能にする手続きです。
  • 借地非訟のメリットは法的解決や専門家の知見活用、デメリットは時間・費用・関係悪化リスクです。
    申立、鑑定委員会、裁判所決定の流れで、借地権に関するトラブルの解決を目指します。

借地非訟とは

借地非訟とは、土地を借りている人(借地人)が土地の利用に関する変更を希望した際に、土地所有者(地主)から承諾が得られない場合に利用できる法的手続きです。

例えば、借地権を第三者に売却したい、建物を建て替えたい、増改築をしたいなど、借地人の要望に対して地主が承諾しない場合に、裁判所に申し立てを行うことで解決を図ることができます。
裁判所は、借地人と地主双方の事情を考慮した上で審理を行い、承諾の可否を判断します。その際、承諾を認める場合には、地代の変更や承諾料の支払いなどの条件が付されることがあります。
重要なポイントは、この制度が通常の裁判とは異なり、当事者間の対立を避けながら円満な解決を目指す非訟事件(訴訟事件以外の裁判事件)として扱われることです。そのため、専門家である鑑定委員会の意見を踏まえながら、双方にとって納得できる解決策を見出すことができます。

借地非訟の種類

借地非訟には、借地人の目的に応じて6つの申立て種類があります。それぞれの申立ては、特定の状況や目的に対応しており、適切な種類を選択することが重要です。
  • 譲渡または転貸の申立て
  • 借地条件の変更の申立て
  • 増改築許可の申立て
  • 土地賃借権の譲渡または転貸の申立て
  • 契約更新後の再築許可の申立て
  • 競売に伴う賃借権(借地権)の土地賃借権譲受許可の申立て
以下では、これらの各申立ての特徴と利用場面について詳しく解説していきます。

譲渡または転貸の申立て

借地権を第三者に売却したい場合や、借地を転貸したい場合に利用する申立てです。土地賃借権の譲渡や転貸には地主の承諾が必要ですが、正当な理由があるにもかかわらず承諾が得られない場合、裁判所に申立てを行うことができます。

申立てが認められると、地主の承諾に代わる許可が得られます。ただし、地主には「介入権」と呼ばれる優先買取権が認められており、地主自身が借地権を買い取ることも可能です。

介入権とは?

借地非訟における介入権とは、借地人が裁判所に借地権の譲渡や転貸の許可を申し立てた際に、地主が第三者への権利移転を阻止できる法的な対抗手段です。この権利は、借地人から借地非訟の申立てがあった場合に、裁判所が定めた14日以上の期間内に行使する必要があります。

行使する際は裁判所が定める相当の対価を支払う必要がありますが、これにより地主は借地権を取得して土地の完全な所有権を回復できます。ただし、借地権譲渡を承諾する特約がある場合や建物が複数の土地にまたがる場合などは、介入権の行使が認められません。

借地条件の変更の申立て

借地契約で定められた建物の種類、構造、規模、用途などの制限を変更したい場合に行う申立てです。

例えば、木造建物(非堅固建物)から鉄筋コンクリート造(堅固建物)への建て替えや、住居から店舗への用途変更などが該当します。裁判所は、周辺の土地利用状況の変化や法令による規制の変更などを考慮して、変更の可否を判断します。

増改築許可の申立て

借地契約で建物の改築や増築が制限されている場合に利用する申立てです。

建物の老朽化による建て替えや、生活様式の変化に応じた増築などが必要な場合に、地主の承諾が得られないときは裁判所に許可を求めることができます。土地の通常の利用上、増改築が相当と認められる場合に許可されます。

土地賃借権の譲渡または転貸の申立て

借地人が借地上の建物を他者に売却する際に必要となる申立てです。

賃借権の譲渡や転貸に際して地主の承諾が得られない場合、裁判所に申立てを行うことで、地主に不利益がないと認められれば許可が得られます。この際、地主は介入権を行使して、自ら建物と借地権を優先的に買い取ることもできます。

契約更新後の再築許可の申立て

借地契約更新後に、残存期間を超えて存続する建物を建築する必要がある場合の申立てです。

この制度は平成4年8月1日以降に設定された借地権にのみ適用されます。やむを得ない事情があるにもかかわらず地主の承諾が得られない場合に、裁判所に許可を求めることができます。

競売に伴う賃借権(借地権)の土地賃借権譲受許可の申立て

借地権付き建物を競売や公売で購入した場合に必要となる申立てです。

買受人は土地賃借権の譲渡について地主の承諾を得る必要がありますが、承諾が得られない場合は裁判所に許可を求めることができます。ただし、建物の代金支払いから2ヶ月以内に申立てを行う必要があり、期限を過ぎると建物が使用できなくなる可能性があるため注意が必要です。

借地非訟にかかる費用

借地非訟の手続きを行う際には、主に以下の3種類の費用が必要となります。

申立手数料

裁判所に支払う手数料で、借地権が設定された土地の固定資産税評価額に基づいて算定されます。例えば、目的物の価格が500万円の場合は12,000円、1,000万円の場合は20,000円、5,000万円の場合は68,000円などとなります。

郵便切手代

裁判所からの通知や書類送付に必要な費用です。

承諾料

申立てが認められた場合に地主へ支払う費用です。種類によって金額は異なり、以下が一般的な相場となっています。
  • 借地条件変更の場合:更地価格の10%程度
  • 建て替え承諾料:更地価格の5%程度
  • 名義変更料(譲渡承諾料):借地権価格の10%程度
なお、弁護士に依頼する場合は別途弁護士費用が発生します。事務所によって料金体系は異なりますので、事前に確認することをお勧めします。

借地非訟を行うメリット

借地非訟には以下のようなメリットがあります。

法的な解決手段の確保

地主の承諾が得られない場合でも、裁判所を通じて正当な権利行使が可能になります。また専門家である鑑定委員会の意見を踏まえた、公平な判断が得られます。

専門家の知見の活用

弁護士、不動産鑑定士、建築士などで構成される鑑定委員会が関与し、専門的な観点から適切な判断と解決策が提示されます。また、鑑定委員会の費用は当事者負担とならないため、経済的な負担が抑えられます。

柔軟な解決の可能性

審理の過程で和解による解決も可能で、当事者間の話し合いによる円満な解決の機会が設けられます。また、調停手続きへの移行も選択できます。

権利保護の実現

借地人の正当な権利行使が可能になります。よって建物の建て替えや増改築、借地権の譲渡など、土地の有効活用が実現可能になり、将来的な土地利用の可能性が広がります。

これらのメリットが認められる理由は、借地非訟が通常の訴訟とは異なり、当事者の対立を避けながら円満な解決を目指す制度として設計されているためです。また、専門家の関与により、客観的かつ合理的な解決が図られやすい点も大きな特徴といえます。

借地非訟を行うデメリット

借地非訟には以下のようなデメリットがあります。

時間的コストの発生

申立てから裁判所の決定まで、通常6ヶ月から1年程度かかり、その間、建物の建て替えや売却などの計画が進められません。よって急を要する案件の場合、事業計画に支障をきたす可能性があります。

経済的負担

申立手数料や郵便切手代などの手続費用が必要です。さらに弁護士に依頼する場合は、別途弁護士費用が発生します。そして、申立てが認められた場合、承諾料の支払いも必要となります。

地主との関係悪化のリスク

法的手続きを取ることで、地主との関係が悪化し、将来的な契約更新や交渉に影響を及ぼす可能性があります。借地契約は継続的な関係であるため、良好な関係維持が重要です。

結果の不確実性

裁判所の判断によっては申立てが認められない可能性があります。また承諾料や地代の額が、予想以上に高額になることもあります。さらに介入権が行使された場合、予定していた取引が実現できません。
これらのデメリットが生じる理由は、借地非訟が最終的な解決手段として位置づけられているためです。そのため、可能な限り当事者間での話し合いによる解決を試みることが望ましく、借地非訟は他の解決手段が尽きた後の選択肢として考えることが推奨されます。

借地非訟事件(譲渡許可)の進行の流れ

借地非訟事件の手続きは、申立てから決定まで、おおよそ次のような4段階で進行します。この流れは、多くの事件が特段の事情がなければ、概ね1年以内に終了するよう進められます。
  1. 申立
  2. 形式的事項(借地範囲、地代、契約期間)の見解に相違がないことの確認
  3. 鑑定委員会による鑑定
  4. 決定
以下では、各段階での具体的な手続きと注意点について詳しく解説していきます。

1.申立

借地権者(申立人)は、借地が所在する地域を管轄する地方裁判所に申立書を提出します。申立書には、申立ての趣旨、理由となる事実、借地契約の内容、申立て前の当事者間の協議内容などを記載します。

また、土地・建物の登記事項証明書、契約書の写し、その他必要な証拠書類を添付する必要があります。裁判所は提出された書類を確認し、第1回審問期日を設定します。

2.形式的事項(借地範囲、地代、契約期間)の見解に相違がないことの確認

第1回審問期日では、裁判所が当事者双方から借地契約の基本的な事項について確認を行います。具体的には、借地の範囲、現在の地代額、契約期間などについて、双方の認識に相違がないかを確認します。

この段階で、借地権の存否や契約内容について争いがある場合は、それらの点についても審理が行われます。必要に応じて追加の審問期日が設定されることもあります。

3.鑑定委員会による鑑定

基本的事項の確認が終わると、裁判所は鑑定委員会に意見を求めます。鑑定委員会は、弁護士、不動産鑑定士、建築士など3名以上の専門家で構成され、現地調査を実施します。

委員会は、許可の可否、承諾料額、賃料額、建物及び借地権価格などについて検討し、意見書を作成します。この意見書は当事者に送付され、双方が意見を述べる機会が与えられます。

4.決定

鑑定委員会の意見を踏まえ、最終的な審問期日が開かれます。ここで当事者から最終的な意見を聴取し、審理が終結します。裁判所は、全ての審理内容を考慮して決定を下します。

決定書には、申立ての許可・不許可、承諾料の金額、支払期限、その他の条件などが記載されます。決定に不服がある場合は、2週間以内に抗告することができます。

まとめ

借地非訟は、地主との交渉が行き詰まった際の有効な解決手段となります。土地利用の変更や借地権の譲渡など、様々な場面で活用できる法的手続きとして整備されており、専門家の関与により公平な解決を図ることができます。

ただし、手続きには時間とコストがかかり、地主との関係悪化のリスクもあるため、まずは話し合いによる解決を試みることが賢明です。借地非訟の制度を理解し、適切なタイミングで活用することで、借地権に関する問題を円滑に解決することが可能となります。

借地権無料相談ドットコムでは、借地権に関する相談を無料でお受けしています。借地権の相続、売買、手続き関係など、借地権に関する内容なら幅広く対応しています。さらに、相談から買取までワンストップで可能なため、借地権に関するさまざまな問題はすべて借地権無料相談ドットコムで解決できます。 お気軽に、まずはご相談ください。

ピタットハウス秋葉原北店の「借地権無料相談」で借地のお悩み伺います!

どんな些細なことでも、
お気軽にまずはご相談を!

ご相談・お問い合わせはすべて無料です。
「借地権・底地」に関する専門スタッフが対応!
どんな状況の土地にも対応いたします!

※発信者番号通知のみの受付とさせて頂きます。

借地権の買取売却をお考えの借地権者様へ

当社ではどんな状態の借地権の買取も承っております。

地主さんとの交渉の代行から、借地非訟のサポートまで借地権者様を最大限にサポートしつつ、
ピタットハウス秋葉原北店が直接借地権の買取りをいたします。

直接買取りのため、仲介手数料などが発生せず、買い手を見つける業務もないので無駄な費用が無くスピーディーに売買が可能です。

借地権の売却をお考えの借地権者様はぜひとも一度当社にお問い合わせください!