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- 相続放棄は慎重に(特に不動産をお持ちの方へ)
民法939条・民法921条
相続放棄をすると、初めから相続人とならなかったことになります(民法939条)。
相続放棄をする場合は、一般には、被相続人が債務超過である場合ですが、時折、被相続人に関係することには一切関与したくない、という理由で、債務超過か否かとは関係なく、相続放棄をする方もいます。
相続財産の処分をすると、法定単純承認となり、相続放棄はできないので、注意が必要です(民法921条)。
相続放棄の期間は、3ヶ月とされていますが、「知ったとき」と評価しうるときなので、事情があれば、それほど厳格に運用されているわけではありません。
相続放棄を行う場合は、該当する家庭裁判所に、必要な書類を添付して、相続放棄申述書を提出すれば、早ければ数ヶ月で終了することもあります。
ただ、被相続人の戸籍を取得する等、手間がかかりますので、数万円の費用を払って弁護士に委任したほうがスムーズです。特に、相続対象の人(被相続人)が亡くなってから3ヶ月を以上経過している場合は、「知ったとき」についてそれなりの事情説明が必要ですので、弁護士が不可欠です。
そして、弁護士に委任する場合には、単なる相続放棄を依頼するのか、それとも、債務超過にあることの調査まで依頼するのかを、検討する必要があります。
前述したとおり、相続放棄をする場合の多くは、被相続人が債務超過です。債務超過がどうかは、相続財産が預金や現金と、消費者金融業者等の借り入れだけであれば、必要書類さえ整えれば比較的容易にわかります。
預金であれば銀行への照会(相続人であることを示せる書類は必要です)、消費者金融業者であればJICC等へ照会し、各消費者金融業者に確認すれば、各金額がわかります。
しかし、相続財産に不動産が含まれていた場合、債務超過かどうかの判断は難しいものです。実際に売却可能な不動産の価格は明らかでないので、債務超過であるかどうかは、容易ではないからです。
そのため、不動産の価格によっては相続するか、相続放棄するかを考える場合、不動産業者に依頼して、簡単な査定でもいいので、不動産が実際に売却できる価格の査定をしてもう、価格を調査することをお勧めします。
さらに困難なのは、相続財産の不動産が、借地権付建物の場合です。
借地権付建物は、処分が容易でないので、実際の取引価格は、極めて安価になってしまうことがほとんどです。 そのため、上記のような査定を行っても、極めて低い価格しかつかない可能性が高いものです。
しかし、稀なことですが、地主がその土地を必要としていた場合には、実際の取引価格を大幅に上回る価格で、借地権を買取ってもらえる場合もあります。
そのため、本来は、借地権付建物についても、不動産業者での査定を行なったうえで、地主に対し、相続財産の調査をしていることを告げて、借地権の買取をする予定があるかどうか、確認するとよいです。不動産業者に査定を依頼した場合は、その不動産業者が、地主への連絡もしてくれると思います。
ただし、それまでの地主との関係が悪い場合や、地主がそれほど当該借地を必要としていない場合は、借地権を高めに買取ってもらうことできません。
したがって、相続に際して、少しでも金銭を取得する方向で考えており、かつ、相続財産に不動産が含まれている場合は、不動産業者に依頼して、財産の調査をすることをお勧めします。
財産の調査を理由とした、相続放棄申述の申立の期間の延長は、比較的簡単に認められています。 ただし、相続財産の調査には、コストがかかります。
相続人が自分で行うのは非常に手間がかかることですし、弁護士に依頼するにしても、単なる放棄だけを依頼する場合よりも、コストがかかります。不動産業者への査定も、費用がかかることがあります。どれもコストがかかることなので、巨額の債務が明らかであれば、わざわざ調査をしないこともありえます。
なお、一般向けの法律解説には、相続財産が債務超過かどうか分からないときには、限定承認という制度があるの記載があります。しかしながら、限定承認は、官報公告等手続きが面倒で費用や時間がかかるため、「相続放棄するとおじさんおばさんとの関係が・・・」というような場合以外、ほとんど行いません。
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