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借地権は賃貸借契約書を作成せず、口約束で契約を結んでいることも少なくありません。契約期間は20年や30年以上と長いため、地主と借地人の実情が契約当初とは大きく異なっている場合も多くみられます。しかし、契約書がない状態で地主から立ち退きを要求されると、どのように対応すればよいのか悩む借地人も多いでしょう。
そこで、契約書がない借地権について注意すべき点や、立ち退き要求への対応方法について解説します。契約書の有無による立退料の支払いや立ち退き拒否の可否など、知っておきたい重要事項を確認しましょう。
借地権の契約書に記されている内容とは

借地権の契約書は、土地賃貸借契約を交わす際に作成される法的な拘束力を持つ重要書面です。まず契約当事者となる地主と借地人の氏名、住所などの基本情報が明記されます。土地の所在地、面積、地目といった借地の基本情報も詳細に記載されます。
契約期間については、借地借家法で30年以上と定められていますが、実際の期間や更新の条件なども具体的に記されます。また、月額での地代や支払方法、支払期日などの金銭的な取り決めも重要な要素です。
さらに、土地の用途や利用範囲についての制限事項も明確にされます。たとえば建物の構造や規模の制限、転貸や譲渡に関する制限なども含まれ、 契約違反があった場合の措置や解除条件なども明記されます。敷金や保証金が設定される場合は、その金額や返還条件なども記載されます。また、土地の返還時の原状回復義務についても取り決められます。
建物の所有権に関する事項や、契約終了時の建物の取り扱いについても明確にされます。地主の承諾が必要な事項や、禁止される行為なども具体的に列挙されます。
最後に契約書の作成日付と、地主・借地人双方の署名押印欄が設けられます。契約内容に関する疑義が生じないよう、できるだけ詳細な取り決めを書面化しておくことが重要です。
借地権の契約書がなくても契約は有効
土地の賃貸借契約は、契約書という形式がなくても法律上有効とされます。民法では、契約は当事者の意思の合致によって成立すると定められているためです。そのため口約束であっても、地主と借地人の間で土地を貸借する合意があれば、正式な契約として認められます。
実際に地代の支払いと受け取りが継続的に行われており、借地人が土地上に建物を所有している事実があれば、契約の存在は明らかです。地主も借地人も互いの権利義務関係を認識しており、事実上の契約が成立していると判断されます。
ただし契約書がない場合、取り決めの詳細が不明確になりがちです。たとえば契約期間や更新の条件、地代の改定方法などが曖昧になってしまいます。後々のトラブルを防ぐためにも、できるだけ書面で契約内容を残しておくことが望ましいでしょう。
特に注意が必要なのは、借地人による重大な契約違反があった場合です。たとえば正当な理由なく長期間地代を支払わないなどの債務不履行があれば、地主は契約解除を主張できます。その場合、借地権は消滅し、借地人は建物を収去して土地を返還しなければなりません。
契約書がなくても、領収書や振込記録など地代支払いの証拠は大切に保管しておく必要があります。また建物の登記も重要な証拠となりますので、きちんと行っておくべきです。
借地の契約書が必要な場面

契約書は後のトラブルを防ぐために重要な役割を果たします。特に地主から立ち退き要求があった際や契約条件の変更を求められた際など、契約内容を確認する必要性が高まる場面では契約書の存在が大きな意味を持ちます。それぞれの場面について詳しくみていきましょう。
借地権を相続した場合
借地権を相続した際、契約書は非常に重要な意味を持ちます。親から引き継いだ借地権について、地代の支払方法や契約期間、更新の条件など基本的な契約内容を確認する必要があるためです。
契約書がない場合は、地主に直接確認することも一つの方法です。地主からの報告を受けた際に、支払方法や契約期間などの契約内容について確認することができます。また、確認した内容は書面に残しておくと安心です。
地主から契約条件の変更要求があった場合
地主から名義変更料や立ち退きの要求を受けた際、契約書は重要な判断材料となります。契約書があれば、そもそもの契約条件や変更の可否について確認できるからです。
契約書がない場合は、地主との話し合いで解決していかなければなりません。 一方で、借地権の契約更新に関しては借地借家法が適用されます。地主と借地人の双方が合意したとしても、法律の範囲内での更新手続きが必要になります。専門家に 相談し、 適切な法的手続きを進めていくことが賢明でしょう。
借地を売却したい場合
借地権を売却する際にも契約書は重要な役割を果たします。売却や転貸に関する制限の有無を確認できるためです。一般的に地主の承諾がなければ借地権の売却や転貸はできませんが、契約書に「承諾不要」という文言があれば可能となります。
契約書がなくても、地代を支払っていた事実や建物が借地人名義で登記されていることを証明できれば、借地権の売却は可能です。地代支払いの事実は領収書や振込履歴で、建物の所有権は登記事項証明書で確認できます。
借地契約書がなくても立ち退き要求が正当になるケース

借地契約書がなくても、一定の条件下では地主からの立ち退き要求が正当なものとして認められる場合があります。しかし、そのためには法律で定められた要件を満たす必要があります。以下では、具体的にどのような場合に立ち退き要求が正当化されるのかを見ていきましょう。
地代の滞納などの契約違反がある場合
借地人が地代を何ヶ月も滞納するなど、重大な契約違反がある場合は、契約書の有無にかかわらず地主からの立ち退き要求が認められます。これは借地人の債務不履行により、地主との信頼関係が破綻 されたとみなされるためです。
このケースでは地主は立退料を支払う必要はありません。むしろ借地人が地代の未払い分を精算する義務を負います。建物の取り壊し費用も借地人の負担となります。
定期借地契約などの更新がない契約の場合
定期借地契約や一時使用目的の借地権、建物譲渡特約付借地契約の場合、契約期間満了時に地主は立退料を支払わずに立ち退きを求めることができます。これらの契約は更新を前提としていない特殊な契約形態であるためです。
契約期間満了後、 借地人は建物を取り壊して更地にして返還する必要があります。ただし、建物譲渡特約付借地権の場合は、地主が建物を買い取る必要があります。
建物を建てる目的でない借地契約の場合
駐車場や太陽光発電設備など、建物の所有を目的としない借地契約の場合、借地借家法の適用外となります。そのため、地主は正当な事由や立退料の支払いなしに、契約終了時に立ち退きを求めることができます。
このような契約では、借地人の権利保護は一般の民法の規定に従うことになります。そのため、借地借家法による借地権者保護の規定は適用されません。
地主が立退料を支払ったうえで正当な事由がある場合
地主が相当額の立退料を支払い、かつ正当な事由がある場合は、借地人に対して立ち退きを求めることができます。正当な事由としては、地主自身が居住するための建物建設や、土地の再開発などが該当します。
ただし、立退料の金額は借地権の価値や借地人の移転費用などを考慮して決定され ます。また、正当な事由の存在と立退料の支払いは、立ち退き要求を認める上での重要な要素として総合的に判断されます。
立ち退きを拒否できたケースもある

地主からの立ち退き要求に対して、借地権者には拒否する権利が認められる場合があります。特に、借地人側に切実な事情がある場合や、地主側の立ち退き要求に合理性が乏しい場合などは、立ち退き拒否が認められやすい傾向にあります。
築後57年を経過した木造平屋建て戸建住宅に関する事案では、賃借人が心臓カテーテル手術を受け、心臓の動脈瘤や重度の肺気腫などを患っており、医師から風邪でも生命に関わる事態になると注意喚起されている状況でした。このため、長年住み慣れた住居からの転居が生命・身体に危険を及ぼす可能性があるとして、老朽化による建て替えの必要性も認められず、立ち退き要求は認められませんでした(東京地裁 令和1年12月12日判決)。
参考:一般財団法人 不動産適正取引推進機構
また、外国籍の事業家が、月1-2回の来日時の住居として賃貸中のマンションを購入し、契約期間満了を理由に借主の立ち退きを求めた事案では、借主は既に住居として継続使用しており、建物にも老朽化等の問題がない一方、購入者は一時的な使用目的に過ぎず立退料の提示もなかったことから、明渡請求は認められませんでした(東京地裁 令和1年7月5日判決)。
参考:一般財団法人 不動産適正取引推進機構
さらに、建築後約40年を経過した建物について、賃貸人が立退料60万円の支払と引き換えに明渡しを求め一審では認められましたが、控訴審では賃貸人に差し迫った事情が認められない一方、賃借人は遺族年金と子供からの援助で生活しており現在の居住地を必要としているため、立退料を120万円に増額しても正当事由は認められないとして、一審判決は取り消されました(東京高裁 平成24年12月12日判決)。
参考:一般財団法人 不動産適正取引推進機構
これらの判例は、借地権者が建物の使用を継続する必要性を証明し、その必要性が貸主の主張を上回る場合に、立ち退き請求が却下される可能性があることを示しています。
出典:一般財団法人 不動産適正取引推進機構 RETIO判例検索システム / 建物賃貸借に関する紛争 – (1)契約 – 契約の解除・解約申入れの正当事由・立退交渉
まとめ

借地権は契約書がなくても有効であり、借地人の権利は法律によって保護されています。しかし、地主から立ち退きを要求された場合、契約書の有無によって対応が変わってくることもあります。
契約違反や定期借地契約などの場合は立退料なしで立ち退きを求められますが、それ以外のケースでは立退料の支払いや正当な事由が必要となります。借地人の状況によっては立ち退き要求を拒否できる場合もあるため、専門家に相談して適切な対応を検討することが重要です。
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