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- 借地の建物の解体義務について
借地契約の満了が近づいている方にとって、借地やその上に立つ建物の管理など、お悩みや不明点は尽きません。
とりわけ借地権の終了に伴う建物の処理解体や返還時の義務・責任について理解を深め、最善の策を見つけましょう。
そこで今回は、借地人の視点から、借地権の一般的な内容や建物の解体義務の有無、解体の費用相場などを解説します。
借地人の基本的な権利と義務を知ろう
借地人には、「借地権」「建物買取請求権」という2つの権利と、「原状回復義務」という義務があります。
加えて借地権に関しては、借地法(旧法)と借地借家法(新法)という2つの法律が適用されており、
この2つの法律に則って上記3つの権利と義務が課せられています。
権利① 借地権
借地権とは、土地を借りて建物を建てる権利のことです。
借りる人を「借地人」と呼び、貸す人を「地主」と呼びます。
借地権は、土地の所有権と異なり、借りた土地の上に建物を建てることができます。
この借地権の内容を決定づけているのが、借地法と借地借家法です。
借地法と借地借家法の特徴
それでは、借地法と借地借家法の特徴は何でしょうか。以下に詳しく解説します。
・借地法
借地法は、借地権者の権利と建物を守る「建物保護ニ関スル法律」を前身に1921年に制定されました。
後述するように、1992年に「借地借家法」が施行されますが、それ以前の借地法に基づいて設定されているのが「旧借地権」です。
この法律は、借地人の権利を強く保護するために作られました。
なかでも借地人の地代の支払いや借地権の継続について、地主よりも借地人の権利を優先しています。
例えば、
- 最初の契約期間が通常30年以上で、新法に比べて借地期間が長い
- 借地権を一度契約したら、契約の期間が終わっても借り続けやすい
- 借地料(土地を借りるために払うお金)を簡単に上げられない
といった特徴があります。
・借地借家法
借地借家法は、1992年に「借地法」を改正する形で制定された法律です。
そのため借地法を「旧法」、借地借家法を「新法」と呼びます。
借地借家法に基づいて設定されているのが「新借地権」です。
借地法が借地人の権利を保護する目的で制定されたのに対して、借地借家法は、地主の権利をより強く保護するために作られました。
また借地借家法には、「普通借地権」のほか、新法で新しく設定された「定期借地権」があります。
これら2つの法律を合わせて特徴づけると、以下の通りです。
- 最初の契約期間は旧法の30年と変わらないが、最初の更新時の期間が20年、その後の更新が10年ごとになった
- 契約の更新に際して、地主と借地人の合意形成がより重要になった。地主が更新に反対する場合でも、正当な理由がないと認められにくい
- 新たに設定された定期借地権は、あらかじめ契約期間が決まっており、更新ができない。例えば、50年や70年など、期間が終わったら土地を返さなければならない
権利② 建物買取請求権
建物買取請求権は、借地人が建てた建物を地主に買い取ってもらえる権利のことです。
借地権が終わるとき(契約が更新されないとき)に使われることが多く、その際には借地人が土地の上に建てた建物をどうするか、という問題が出てきます。
建物買取請求権を行使する要件
建物買取請求権を行使するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 借地契約が満了した場合
- 借地上に建物がある場合
- 地主側が正当事由によって自動更新を拒否した場合
建物買取請求権の行使を検討している場合は、上記の要件を満たしているか事前に確認しましょう。
義務① 原状回復義務
借地人は、借地の契約が満了した時に「原状回復義務」があります。
もう少し噛み砕いていうと、借地人が借地契約が満了した際に、借地上の建物や設備を契約締結時の状態に戻すことです。
原状回復義務が発生する理由は、
- 借地契約に原状回復義務に関する条項が含まれているため
- 借地権は土地を「借りて」建物を建てるという性質がある
の2つに大別できるでしょう。
わかりやすくいえば、借りた場所を元の状態に戻すことで、次にその場所を使う人や地主にとって公平で便利になるようにするための「約束」といえます。
この義務があることで、次の借地人も安心してその場所を使うことができ、地主も新たな土地の利用計画を立てることができます。
借地の建物解体が不要な条件3つ
建物買取請求を行う
先ほどお伝えしたように、建物買取請求権は「借地人が地主に対して自分が建てた建物を買い取ってもらえる」権利です。
つまり、この権利を行使すれば建物が建っている状態で地主に借地を買い取ってもらえるので、借地人が解体する必要がありません。
ただし前述したように、建物買取請求権の行使は必要要件を満たしていなければならないため、必ず事前に確認しましょう。
なお借地人が契約違反行為(家賃滞納など)を行っている場合、建物買取請求権は認められないので注意しましょう。
地主に借地権を買い取ってもらう
借地権は不動産として扱われ、通常の不動産と同様に売却できます。
借地権の価格は、明確な相場がなく、地域や状況によって異なりますが、一般的には更地価格の50%程度で取引されることが多いです。
とりわけ地主が土地を自ら活用したいと考えている場合、借地権の買取り交渉に前向きに臨むことが期待できます。
ただし地主に借地権を売却するには、買取額や条件に関するトラブルを防ぐためにも、事前の交渉が必要です。
借地人は、地主との交渉に際して、借地権の価格や条件を適切に設定する必要があります。
底地と借地権を第三者に売却する
借地権は第三者に売ることもできますが、事前に地主の許可が必要です。
また、そのためのお金を払わないといけないこともあります。更地価格の10%程度と考えてください。
この売却時において、「地主さんが許可してくれない」「とても高いお金を要求される」といった問題が起こることがよくあります。
さらに借地権を売ろうと思っても、それを買いたいという人を見つけるのは容易ではありません。
なぜなら、借地権を持つと毎月のお金を地主に払わなければならず、家を建て直したりするたびに許可をもらってお金を払わないといけないからです。
もし借地権を第三者に売りたいのであれば、専門の不動産会社に相談するのが良いでしょう。
専門の会社は地主との交渉を代わりにやってくれるので、難しい手続きを簡単に済ませて借地権を売ることができます。
建物を解体することに…費用相場は?
上記の条件が整わず、借地の建物を解体して地主に返還する場合、建物の解体に相応の費用を払う必要があります。
状況によって費用相場が多少変わるため、事前に把握しておくと良いでしょう。
建物の構造
建物の構造によって、解体費用が変わります。
以下は一坪あたりの目安です。
- 木造:3〜4万円/坪
- 軽量鉄骨造:3万5千円〜4万5千円/坪
- 鉄筋コンクリート造(RC造):5万円〜7万円/坪
地域差
地域差も視野に入れましょう。
地域によって人件費が異なるため、解体費用に多少の差が出るからです。以下の表を参考にしてください。
地域名 | 木造 | 鉄骨造 | 鉄筋コンクリート造 |
---|---|---|---|
東京都 | 3万8,000円/坪 | 4万8,000円/坪 | 6万8,000円/坪 |
神奈川県 | 3万1,000円/坪 | 3万8,000円/坪 | 6万3,000円/坪 |
大阪府 | 2万3,000円/坪 | 3万3,000円/坪 | 5万4,000円/坪 |
北海道 | 2万1,000円/坪 | 1万6,000円/坪 | 2万2,000円/坪 |
沖縄県 | 2万円/坪 | 2万円/坪 | 2万円/坪 |
底地と借地権を第三者に売却する
借地の建物を解体するにあたり、実は立地条件もポイントの一つです。
例えば工事のために重機が入りやすい環境であれば、余計な費用が発生しにくいでしょう。
逆に道が狭くて重機が入りづらい、障害物等の影響でそもそも重機が使えない、という状況であれば解体費用がプラスされることもありえます。
アスベストの有無
建物の内部にアスベストが含まれていると、通常の工事よりも作業や手続きが多く発生します。
飛散しないように排気装置等を設置したり、撤去が必要になったりなど、全体的に工事費用がかさんでしまいます。
2006年以降、アスベストの使用は禁止されていますが、それ以前に竣工された建物には使用されている可能性があります。
事前の確認調査が重要です。
借地の返還方法に迷ったら…
ここまで、借地権の現状や、借地の建物の解体義務について解説してきました。
借地には原則的に原状回復義務がありますが、借地の返還方法次第で建物の解体義務は発生しません。
しかしながら複雑な借地権の定義や、煩雑な返還方法を理解することは難しく、諸々発生する面倒な交渉や取り決めに対応することも容易ではありません。
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